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クビ-5 [創作]

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-甘い逃避行-

人騒がせなXは、セシリアという女性と二人でのんびり温泉めぐりをしていた。
この旅行を最後に日本を離れ、二人でセシリアの母国に移住する計画になっている。

風光明媚なリアス式海岸、青い海がきらきら輝く。
Xは海をバックにセシリアにポーズをとらせ、写真を撮りまくっていた。



「宝くじが当たっても、ケイコにバレないかドキドキしてたんだぜ。
アイツ、金のことしか頭にないからな。
実際に現金が手に入るまで、生きた心地がしなかったよ。
バレたら、マジ殺されてたかもな。
でもさ、君と出会えたことが一番、人生の当たりくじだよ、ハニー」

「それにしても景気よく、いろんなところにばらまいたみたいね」

「妻たちにはずいぶん迷惑かけたからな。
でも、ケイコには何にもなしだぜ。
きっと俺がいなくなったら、自力で何でもかんでも金に換えそうだからな。

キョーコ君にはメロンと100万円送っといた。
新入社員歓迎の飲み会の時に、メロンが好きだって言ってたからな。
アイツ、単純というか、天然というか、いじりがいがあったなあ。
ちょっとやりすぎたかもな。恨んでるだろうなぁ。
ま、最後にまたいたずらしたからね。
ひっかかったとしたら、俺の実家に100万円送っちゃってるかもな」

「悪い人ね。でも、キョーコって子のこと、ちょっと好きだったでしょ?」


・・・そうかもな。相手にされなかったけど、一番好きなタイプだったかもな。
でも、でも、いくらキョーコでもメロンの匂いがしたらわかるだろう。
いろいろ悪かったな。迷惑料、受け取ってくれたよな。・・・

Xは断崖に打ちつける白いしぶきを見下ろしながら、感慨深げにキョーコのことを思い出していたが、
考えを打ち消すように遠い海に視線を移し、そしてセシリアに向かって言った。

「セシリア、今、ホントにほっとしているよ。
ケイコには悪いけど、
こんな心に安らぎを感じたのって何年ぶりだろう。
お前と二人きり。世界は俺達二人のためにあるような気がする。
幸せってこういうことだなんだな。

海、きれいだな。でもこの景色ともさよならだ。
さよなら、日本」


セシリアもつぶやいた。


「さよなら」



一瞬の出来事だった。セシリアがXを思いきり突き飛ばし、Xは海に転落していった。


「女は欲張りなの。世界は独り占めしたい。一人で母国に帰ります。
ごめんなさい、おバカさん。いろいろとありがとうね。感謝しているわ」

つづく
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