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廃棄焼却 [創作]

どのぐらい眠っていたのだろうか?
僕は横たわったまま周囲を見回した。
無彩色のただ広いだけの部屋、天井と壁はさいの目模様になっている。
床は何か特殊な金属でできているようだ。
家具ひとつ置いていない殺風景な部屋。

考えてみる。
そもそも僕はどこから来たのだろう?
そして、何故ここにいるんだろう?

いつから動いていないのかも思い出せない。
果たして立ち上がれるのだろうか?

神経を集中して足を動かしてみた。
動いた!
ゆっくりと立ち上がると、案外天井が低いことに気がついた。
手を伸ばしたら、天井に届くだろうか?
手に神経を集中させてみる。
うまくいかない。
何故だ?

右手を見る。
右手がない。

左手を見る。
左手が存在しない。

両腕がなくなっていた。
僕は突然悲しくなってきた。

悲しいとき人は泣く。
でも、僕の目から涙は出なかった。
ただ焦燥感が広がるばかりだ。

何か楽しかったことを思い出そう。
そうだ、「家族」のことを思い出そう。

僕は家族のために料理をしたり掃除をしたり、
男の子と女の子に勉強を教えたりしていた。
「家族」に「ありがとう」と言われることがうれしくて、頭の中をフル回転させて尽くしてきた。
「しあわせ」だった。

大きな木のある、三角屋根のおうちに住んでいたはずなのに、
何故、今はこんなところにいるのだろう。。。

物音で思考が中断した。

全面が壁だと思っていたが、そのうちの一面が広く開き、轟音とともにさまざまな物が流れ込んできた。

僕は足元をすくわれて、再び倒れた状態となった。
しかも、身体の上からたくさんのものが降ってきて、荷物の中に埋まってしまった。

最初に僕の顔の上に降ってきたのは小さな人形だった。
首のとれた人形、足を失った人形、そしてその後からは、壊れた電化製品や家具。
でもそれ以上は自分が埋もれてしまったので、何がやってきたのか見えなかった。

外から声がする。
「あのロボットは分解すればパーツごとに使えたんじゃないか?」
「古すぎて使えないさ」

ドアが閉まったかわりに床が開いた。

僕は灼熱の炎の中に落ちてゆく。


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コメント 3

kyao

うーん、ちょっち悲しい…でもなんだか好きです。最初は新しい小説が始まったのかと思ったんですが、ショートストーリーだったんですね。(^^)
今、某国営放送で星新一さんのショートストーリーが放送されてますね。それと同じものを感じました。(^^)
by kyao (2008-09-14 08:48) 

りんたろ

kyaoさんへ
星新一さんのショートストーリーは学生時代に少し読んだことがありますが、あまり意識してませんでした。影響を受けているのですね?某国営放送でさがしてみます。
安部公房とユージンオニールの戯曲が好きでした。
息子が「感情のあるロボットが欲しい」と言ったので、ロボットが悲しかったりすると大変だよって言いながら作りました。
ロボットが怖がったりすると危険業務から逃げて、何のためのロボットかわからなくなるので、炎に落ちていくときは怖くないという設定です。
by りんたろ (2008-09-17 18:54) 

りんたろ

ななはちさんへ
niceありがとうございました♪
by りんたろ (2008-09-17 18:54) 

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