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ヘルパー2号の悲劇 [創作]

ある日の朝・・・

「リュータ、いい子にしてて。今日はなるべく早く帰ってくるから」

「ママ、今日は日曜日だよ。お休みなんじゃないの?」

「ゴメン、しばらく忙しいの。2号がいるから大丈夫でしょ?」

そう言うとママは人型お手伝いロボット「ヘルパー2号」を起動させた。


「おはようございます、リュータくん。今日も一緒に楽しくお勉強しましょう」

「楽しくなんかない!」


「仕方ないでしょ。中学受験が終わったら、遊園地に連れて行ってあげるから、
それまでいい子でお勉強してて。わかった?
ごめん、急いでいるから。行ってきます!」

ママは振り向きもせずに出かけてしまった。
いつも、こうだ。
そしてヤツはこう言う。。

「リュータくん、お勉強しますか?」

「しない!」

「リュータくん、一緒に遊びますか?」

「遊ばない!」

「リュータくんはお勉強をしてください。ワタシはお掃除します」

2号の足は変形して掃除機になった。
手で散らかっているものを片づけながら、足が埃を吸い込む。

2号が来てから、ママが掃除をするのを見たことがない。
こんなに手際よくきれいになるんだから、ママも自分でやる気なんてなくなるんだろう。

「リュータくん、塾の宿題の答え合わせします。ノート見せてください」

リュータくん、リュータくん、毎日毎日、一日中、名前を呼ばれて、もうウンザリだ。
ママはどういう設定をしたんだろう。

ボクは2号にノートを渡すと、この間こっそり見つけ出した2号のマニュアルを読み始めた。
2号を壊せばママはうちにいてくれるに違いない。
以前のように、掃除したり、料理を作ったり。。。きっとボクと一緒にいてくれるだろう。

「リュータくん、何を見てますか?」

「何でもない!」

ボクはマニュアルを隠した。
2号は気にせず(ロボットなんだから気になるとかいうこともないんだろう)、宿題の解説を始めた。

ボクは聞いているフリをしながら、2号を壊す方法を考えた。
耳の後ろに一番重要なパーツが埋め込まれているらしい。
むずかしい用語の意味はわからなかったけれど、壊れさえすれば十分だ。

「リュータくん、昼食を作る間、宿題を直してください」

「ボクはゲームする」

「それならワタシも後で通信で参加します」

「オマエとはしない!」

2号は返事をせず、料理を始めた。
2号の料理は確かに美味しい。
朝ごはんはママが用意したけど、作ったというより、買ってきたパンを並べただけだった。
2号は嫌いな食材でも、ボクの好みに合わせて、食べたくなるような料理を作る。

でも、でも、ボクはヤツを壊す。
だって・・・

「リュータくん、お昼にしましょう」

2号はロボットだから、食事をしない。
ボクが食べるのをずっと見ているだけ。
美味しそうに食べても、まずそうに食べても、何も言わずに、ただ見てるだけ。

「リュータくん、食器を片づけ終わったら、一緒にゲームします」

2号にゲームで勝っても、ちっとも嬉しくない。
ロボットなんだから、本気を出せば強いに決まっているのに、ボクに負けるなんて、
何だか馬鹿にされているみたいだ。

ゲームを少しだけしてから、ボクはずっとテレビを見ていた。
その間、2号はボクを見ている。

「リュータくん、受験勉強しましょう」

「リュータくん、少し勉強しましょう」

「リュータくん・・・」


何度も言うな!

ママはいつ帰ってくるんだろう?
早く2号を止めてくれ。
そうでないと、そうでないと。。。


ボクはパパのゴルフバッグを出していた。
気がつくと、クラブを握りしめて思いきり2号の頭に叩きつけていた。
何度も、何度も。
無我夢中だった。




「安全装置解除」  そんな声が聞こえたような気がした。

そして、ママの声が聞こえたような気がする。
「ただいま!」





「侵入者発見。リュータくんを危険から守ります」





ボクはママが2号の両腕にしっかりと捕まれたまま
息絶えるのを見た。

廃棄焼却へ

IMG_1096.jpg  我が家の受験生は大丈夫だろうか?
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