再び金魚姫 [創作]
化学なんか全然好きじゃないけれど、
最近、頑張ることにしたの。
ゲンちゃんは去年の担任。
この頃、よくうちに遊びに来てくれる。
去年から憧れていたけれど、
まさか、うちに来て一緒にご飯食べたり、ゲームしたりできるなんて夢のよう。
なんだか家族が増えたみたい。
私、ゲンちゃんのお嫁さんになろうかな。
でも、先生だから、
私が高校卒業するまで、そんなこと言わないよ。
先生も待っててくれるのかな。
ゲンちゃんは化学の先生だから、私も勉強して先生になろうかな。
一緒に先生したいよ。
ゲンちゃんは化学、じゃあ私は国語にする?
一緒の学校だったらいいな。
うーんと頑張るから、ゲンちゃんも協力してね。
あっ、ママが呼んでる。
「潤子、あのね、玄田先生との結婚式、夏休みで考えているの。
新婚旅行の間、一人になるけど、あなた大丈夫?」
「ママの馬鹿!」
潤子はうちから飛び出した。
うすうす気がついてはいた。
信じたくなかったから、考えないようにしていた。
だって、ママより私の方が可愛い!
ママより私の方が先に、ゲンちゃんのことを好きだった!
ママみたいに、ほうれい線もない。
ママみたいに、セルライトもない。
ママみたいに・・・
私の方が絶対に魅力的だ!
ママなんか大嫌い!
泣きながらうろついているうちに、一件のペットショップに辿りついていた。
可愛い子犬!
可愛い子猫!
若い方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!
カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!
華やかな方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!
そして、地味な金魚!
つまんない金魚だわ!
潤子はつぶやいた。
「いいわよね、金魚は水槽の中で呑気に泳いでいるだけ!」
「そんなことないわよ。
金魚だっていろいろ大変なんだから」
金魚がしゃべった?
潤子は驚いて聞き返した。
「あなたがしゃべったの?」
「そうよ、悪い?
人間こそ馬鹿みたいに贅沢ばっかり言って、偉そうに。
人間の子どもなんて、大きな体のくせに一人じゃ何にもできないのね」
「金魚なんかに言われたくないわ。
人の気持ちもわからないくせに」
「わかってもらおうなんて甘いわね。
あなたなんかに金魚が呑気だなんて語る資格ないわ。
・・・
目一杯素敵に見えるように泳ぐことってできる?」
「そんなことしか考えてないなんて、馬鹿みたい」
「じゃ、できる?」
「何で私にできるのよ。人間なのに」
「やってみないとわからないわよ。
入れ替わってみましょうよ、ほら!」
潤子は金魚になって水槽で泳いでいた。
自由を手に入れた金魚は、振り向きもせず店から出ていき、
二度と戻っては来なかった。
夏休みを迎え、玄田は寂しい思いをしていた。
今頃、新婚旅行に行っているはずだったのに。
結婚が決まった途端、
婚約者の娘が、「私は金魚なの」なんておかしなことを言いだした。
婚約者は、娘の異常は親の結婚話が原因だと考えた。
話し合った結果、婚約破棄。
元担任と母親の結婚なんて、相当ショックだったのだろうか。
娘とはうまくいっているつもりだった。
でも、無理していたのだろうか。
我慢し過ぎて精神的限界を超えたのかもしれない。
寂しさを紛らわすため、ペットショップに行ってみた。
また、一人ぼっちで生きていかなければならない。
せめて、熱帯魚でも飼ってみようか。
カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!
今の気分には合わない。
そして地味な金魚!
俺と一緒だな。
玄田は地味な金魚1匹と、水槽を一つ買って帰った。
THE END
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最近、頑張ることにしたの。
ゲンちゃんは去年の担任。
この頃、よくうちに遊びに来てくれる。
去年から憧れていたけれど、
まさか、うちに来て一緒にご飯食べたり、ゲームしたりできるなんて夢のよう。
なんだか家族が増えたみたい。
私、ゲンちゃんのお嫁さんになろうかな。
でも、先生だから、
私が高校卒業するまで、そんなこと言わないよ。
先生も待っててくれるのかな。
ゲンちゃんは化学の先生だから、私も勉強して先生になろうかな。
一緒に先生したいよ。
ゲンちゃんは化学、じゃあ私は国語にする?
一緒の学校だったらいいな。
うーんと頑張るから、ゲンちゃんも協力してね。
あっ、ママが呼んでる。
「潤子、あのね、玄田先生との結婚式、夏休みで考えているの。
新婚旅行の間、一人になるけど、あなた大丈夫?」
「ママの馬鹿!」
潤子はうちから飛び出した。
うすうす気がついてはいた。
信じたくなかったから、考えないようにしていた。
だって、ママより私の方が可愛い!
ママより私の方が先に、ゲンちゃんのことを好きだった!
ママみたいに、ほうれい線もない。
ママみたいに、セルライトもない。
ママみたいに・・・
私の方が絶対に魅力的だ!
ママなんか大嫌い!
泣きながらうろついているうちに、一件のペットショップに辿りついていた。
可愛い子犬!
可愛い子猫!
若い方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!
カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!
華やかな方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!
そして、地味な金魚!
つまんない金魚だわ!
潤子はつぶやいた。
「いいわよね、金魚は水槽の中で呑気に泳いでいるだけ!」
「そんなことないわよ。
金魚だっていろいろ大変なんだから」
金魚がしゃべった?
潤子は驚いて聞き返した。
「あなたがしゃべったの?」
「そうよ、悪い?
人間こそ馬鹿みたいに贅沢ばっかり言って、偉そうに。
人間の子どもなんて、大きな体のくせに一人じゃ何にもできないのね」
「金魚なんかに言われたくないわ。
人の気持ちもわからないくせに」
「わかってもらおうなんて甘いわね。
あなたなんかに金魚が呑気だなんて語る資格ないわ。
・・・
目一杯素敵に見えるように泳ぐことってできる?」
「そんなことしか考えてないなんて、馬鹿みたい」
「じゃ、できる?」
「何で私にできるのよ。人間なのに」
「やってみないとわからないわよ。
入れ替わってみましょうよ、ほら!」
潤子は金魚になって水槽で泳いでいた。
自由を手に入れた金魚は、振り向きもせず店から出ていき、
二度と戻っては来なかった。
夏休みを迎え、玄田は寂しい思いをしていた。
今頃、新婚旅行に行っているはずだったのに。
結婚が決まった途端、
婚約者の娘が、「私は金魚なの」なんておかしなことを言いだした。
婚約者は、娘の異常は親の結婚話が原因だと考えた。
話し合った結果、婚約破棄。
元担任と母親の結婚なんて、相当ショックだったのだろうか。
娘とはうまくいっているつもりだった。
でも、無理していたのだろうか。
我慢し過ぎて精神的限界を超えたのかもしれない。
寂しさを紛らわすため、ペットショップに行ってみた。
また、一人ぼっちで生きていかなければならない。
せめて、熱帯魚でも飼ってみようか。
カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!
今の気分には合わない。
そして地味な金魚!
俺と一緒だな。
玄田は地味な金魚1匹と、水槽を一つ買って帰った。
THE END
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むー…なるほど、そうくるか…こういう展開もありなんだなあ。うんうん。(^^)
先の「金魚姫」と同じことを問い掛けられているんですね。金魚になった女の子は、結局、好きな人と一緒にいられるようになったけど、果たしてそれは幸せなのか…。
小さい頃、先生を好きになった経験がないけど(でも、中学校の担任の先生は好きでした)、今の私だったら…どうするかなあ…。
母親とその先生の結婚を認めておいて、心の中では好きな先生との同居生活を楽しんじゃうとか…おお、嫌だ嫌だ。おばさんになると、考えることが醜い(爆)。(^^ゞ
by kyao (2010-05-21 11:32)
>母親とその先生の結婚を認めておいて、心の中では好きな先生との同居生活を楽しんじゃうとか
悪っ(^_^;)
玄田の物語とか、潤子の母の物語とか、つなげていこうかと思っていたのですが、収拾がつかなくなるので、ループさせて終わらせます。
ジャンプしてみて、幸せなのか?ジャンプしないで、悶々と生きるか?
現実はゲームみたいにいろいろと試してみれないですものね(^^ゞ
by りんたろ (2010-05-23 13:41)