SSブログ

放課後の猫 [小梅]

部活はもう終わっているはずなのに、娘がぜんぜん帰ってこなかった。
道草するって言ったって、学校まで5分で行ける距離、何してるねん?

と思っていたら、外が騒がしい!
録音して聞いたことのある私の声とそっくりの声が一番やかましい(ヤダヤダ)
学校と家が近いのも良し悪し。うちの前で騒ぐな~

♪ピンポ~ン♪

「おかあさん、早く早く、早くあけて、大変大変」

いったいお前はうっかりハチベエか?

それとも、トイレ我慢してたの?



「猫が死にかけてる」

もしかして家の玄関の前に死にかけてる猫をみんなで連れてきてくれたの?

「って言うか、もう死んでない?」

「痙攣してたから死んでないよ」

痙攣してから亡くなったんじゃないの?

しばらく小梅と友達数人でお世話していたようだった。
お水をあげたり(ほしくなかったかも)

「さけフレークあげてもいい?」

いや、その状態で何かを食べるのは無理ですから。

子どもたちのやさしい気持ちを踏みにじることもできないから「捨ててきなさい」なんて言えない。



飼うって言うんですけど・・・

でも、どう見ても死んでるんですけど・・・

いつまでもいつまでも解散しない中学生!
(中学生の心も捨てたもんじゃない)

「遅くなるからもう帰った方がいいよ」

あらゆるアレルギーの疑いのある私は直接触れられないので、濡れたタオルで猫の体をなでた。
カッと見開いた黄色い目もその体も動くことはなく、私は猫の体をなで続けた。

「猫はね、隠れてこっそり死にたいんだよ」
でも、やさしい中学生に看取られて幸せだったのかもしれない。

死んだ黒い野良猫は遠くから傍観していると気持ち悪いけれど、そばに寄り添うとぜんぜんそんなことはなく
むしろ、穏やかな存在だった。

「死」自体は静かなものかも。
誰かのお葬式に行くと必ず後で具合が悪くなるのは、「死」のせいではなく、家族の「悲しみ」の”気”のせいだと思った。

私は市に電話をして、猫の引き取りをお願いした。
カラスに襲われないように段ボールに入れておくようにと言われた。

遅くなったので小梅の友達は迎えを呼んだ。(実は猫を連れて帰りたかったようだ)
「飼う」と言ったみたいだけど「猫は飼えない」と一喝されて帰って行った。
って言うか、もう飼えないから!



段ボールにタオルを敷き、庭に生えていた花と保冷剤を入れて、猫にお別れした。



翌朝、気がつくと段ボールはもう運ばれた後だった。

小梅は学校で友達に一部始終を語ったのだろうか?

今日も帰り、弔いのために家に寄ってくれたお友達がいたらしい。




父にこの話をしたら、「線香もあげなかったのか」と言われた。
ごめんなさい!
nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:育児

nice! 1

コメント 2

kyao

父の葬儀を終えて間もないせいかも知れませんが…お嬢さんは貴重な体験をされたのではないでしょうか(こんな言い方を、気に触りましたらごめんなさい)。

最近、「死」というものが「知ってはいけないこと」や「見てはいけないこと」のように思われているような気がします。
それでもやっぱり「死」はやってきますし、誰でもその場に立ち会うことが一度や二度はあるわけです。それはゲームのようにリセットしたりビデオのように撒き戻して「なかったことにする」ことは出来ません。

目の前で「死」に直面してしまうと言うのは大変ショックなことだと思います。何年も忘れられないと言うことも少なくないと思います。
でも、人生の中で「どうしようもないことがある」ということを知ることは決して間違っていないと思います。私の父の死は、改めて私にそれを知らしめてくれた気がします。

ネコちゃんに改めてご冥福をお祈りします。
そして、りんたろさんとそのお嬢さんに「ありがとう」と「ご苦労様でした」と…いろいろな想いをこめてnice!をお送りさせてください。

お線香、きっと私も忘れると思います。その場にいたら、すごく動揺すると思うから。

by kyao (2008-07-11 08:32) 

りんたろ

kyaoさんが悲しみを思い出すような記事になってしまっていたら、ごめんなさい。まだまだ大変な時期だと思いますが、落ち着いたら、お母様とゆっくり温泉にでも行ってお疲れをとりながら、思い出話をする機会があるといいですね。

実際、子どもたちが猫を連れてきて最初見たときには仰天!動揺しました。でも、しばらく身体を拭いている間にいとおしいものに感じ、今でも姿を思い出すことができます。亡くなってリセットではなく、生きている人の中できっと生き続けるものなのではないでしょうか。だからこそ自分の命も人の命も粗末にすることはできませんよね。
こういう場合の子どもの対処の仕方、大人の対処の仕方を含め、いろいろと勉強になる体験だったようにも思います。
by りんたろ (2008-07-18 21:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

ひとりでもいいもん若さの秘訣 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。